日本体験 外国体験 Experiences in different cultures
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任友慧さん

食事から見る異文化


by 任友慧 (中国、早稲田大学教育学部)

 中国と日本は一衣帯水の隣国で、昔から各領域において様々な交流活動が活発に行われてきました。日本に来る前に、私は日本人の生活様式にあまり違和感がなかろうと思っていました。しかし、実際日本人と出会い、日本人の日常生活に触れたら、やはり中国とだいぶ違うことに気づきました。

 印象深いのは日本人の食事です。友達や仕事同士などのお客さんを招待するのは中国でも日本でもよくあることですが、招待する場所は微妙に違います。中国人の場合はお客さんを招待する時に、レストランへ行くのが普通です。レストランでお客さんを招待するとき、自分だけではなく、お客さんの好みまで気を配って注文することが出来るメリットがあります。日本人の場合はお客さんを自分の家に呼ぶのが好まれるらしいです。自宅にお客さんを招くことによって親密感が生じるところがメリットだと思います。レストランなどでの違和感がないため、みんな気軽に食べられます。また、レストランのような騒音もなく、みんなゆったりして話せます。

 ただし、近年、中国人の意識も日本人の様式に転換しつつあります。社会学者の指摘によると、プライベートの空間を重視する傾向が現れるのは、経済も文化も急速に発展を遂げていることを象徴します。このような意識転換が中国人の生活レベルの向上を示しているのではないかと、私は思います。

 料理からも文化の相違が見られます。中国人はお客さんを招待する時、料理を適切な量より多く注文するのが普通です。なぜかというと、料理がお客さんに全部食べきれちゃうと、量がまだまだ足りないということになるため、けちな人だと思われるからです。この場合、料理を追加しなければなりません。逆に日本人の場合は、主人に出されたものを食べきれないと、失礼なことだと考えられます。全部食べることは、感謝の気持ちを込めてご馳走をいただいたことを意味します。どこの国の習慣でもその国の人の考え方の中で成り立つものですが、食べ物を大事にする気持ちからすると、私はどうも中国人のやり方には賛成できません。

 もちろん、食事の時、日本人のやり方が全部正しいとは思いません。日本に来たばかりのとき、お母さんがある日本人の夫婦に食事に招かれて一緒に伺いました。食事が始まる前に、旦那さんは私たちと雑談したり、仕事の話をしたりしていましたが、奥さんは一人で食事の準備をしていました。食事が始まっても、奥さんはたまに席に着いて、一緒に雑談したり、少し食べたりしましたが、ほとんど食べずに厨房で次の料理の準備をしていました。やっと料理を全部出して、奥さんが食べ始めたら、そろそろ食卓の片づけをしなければなりませんでした。この場面に、日本人の意識に存在するジェンダーが現れます。これほど豊かになってきた日本社会にこんなにジェンダー意識があることがどうも不思議だと思います。

 どこの国でも独自な文化があります。そして、このオリジナル文化を先祖から受け継ぎ、時代とともに変化させ、次の世代に渡します。異文化を自分の目で見ること、そして肌で感じることが国際理解への第一歩だと思います。
〈2006年04月〉