北朝鮮に行ったのは10年ほど前、まだ拉致問題が明らかになっていないころです。
往復とも船旅で、万景峰号に乗りました。船内の壁には、金日成初代国家主席の写真が貼ってあるし、博物館に入るときもいったん階段下までおろされて「偉大なる・・・」を聞くまでは入れない。個人崇拝がすごいと思いました。
船が着いたときこんなことがありました。入国審査を待っていた、日本人らしき女性が。なつかしそうに、じっとこちらを見ていましたがしばらくするといなくなっていました。
160人ぐらいの団体旅行でしたが、手荷物検査が厳しくて6〜7時間ぐらいかかりました。厳しかったですね。私は別室に連れて行かれ、フィルムを没収されるところでした。10本持っていたんですが、「なぜそんなにフィルムが必要なのか。没収する」と言われたので「写真を撮ってもいないのになぜ没収するのか。理由を教えてほしい」と頑張ったら、通訳と検査官で相談したらしく包装されていない1本だけの没収ですみました。もちろんカメラの中にフィルムを入れたまま入国するのも厳禁です。お釣りの日本円をポケットに入れていて没収された人もいましたね。
私たちは日本製の冷房付きの新車のバスに乗っていましたが、外側にベニヤが張ってあるバスなんかも走っていました。1時間以内は歩いて通勤する人もいると聞きました。朝6時ごろホテルの側を大勢の人が歩いている姿を見ましたよ。
でも建物はどれも天井が高くて立派でした。道もそうですね。6車線の道がまっすぐに通っている。ガードレールがないのでいざというときに飛行機が飛べるようになっていて、地下で横断するようになっていました。
平壌では服装はまあまあでしたが、女性の靴はみんな同じ物を履いているように見えました。スタイルはよく美人が多かったですね。
買い物は高麗ホテルの地下に行ったんですが、ヨーロッパの国の物は、いろいろありました。売り場で「トマト1つ○○円」と書いてもらって会計で払うんですが、担当者が1人しかいないから、長い行列が出来て・・・。お金の管理が厳しいと思いました。私は買う物がないから「力道山酒」を買ってきました。亡くなって何十年も経つのに、力道山は英雄なんですね。
それから土産物屋に行くというので楽しみにしていたんですが、建物は広くて立派なんだけど、品物が少ない。むぎわらで編んだなべしきを「これ5つちょうだい」と言ったら「出てるだけです」って言われちゃった。
38度線は、私が思っていたイメージと逆でした。国連軍の方は絶えずこちらを厳しく監視していて、ぴりぴりしていましたが、北朝鮮側では日本人観光客が兵士と一緒に写真を撮ったり、38度線の取り決めに調印したテーブルに座って写真もとれました。多くの観光客がいました。ヨーロッパ、特にドイツ人が多かったようです。ドイツは国交もありましたからね。
そうそう、それで行く前に、ジーパン、Tシャツも襟がない物は博物館などに入れないと聞いていました。私たちの仲間に襟無しの人がいたんですが、上着を着て入りました。ほかには印刷物やガイドブックも駄目です。
うらやましいこともありましたね、青春街スポーツ村には水泳、バスケット、バレー、 ウエイトリフティング、卓球、ハンドボール、バドミントン、などそれぞれ独立した競技場がありました。
忘れられない思いでは、金剛山からの帰りにおもに(おかあさん)といっしょに、アリランを歌って踊ったこと。食事もおいしかったです。とくにキムチはおいしくて、それからキムチが食べられるようになりました。